《第45号》●希望の法則45 ガンを切る? 切らない?――判断基準は?(2)

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かつて「ドクハラ」という流行語を作った、
土屋繁裕さんという外科医は、
みなさんの中でもご存知の方もおられるでしょうが、
癌研病院をやめて、僕がガンに罹った頃、
日本で始めてのガン専門相談所「キャンサー・フリートピア」を開設。

「医師の患者いじめに騙されるな」と
患者のための「正義の味方」のような
人情味あふれる外科医でした。

残念にも7年前に過労で他界してしまったのですが、
土屋医師が残した著書に、どの外科医も書かない、
本音の手術選択の条件が明かされています。
素晴らしい良書ですから、ぜひ、皆さんと共に、再読して見たいと思います。

その土屋医師の名著は、ズバリ、タイトルが、
このガン、切るべきか、切らざるべきか」(NHK出版)というものです。
その中に「手術選択の4原則」=患者の判断条件をあげておられます。

1.手術による効果が他の治療より優れている
2.手術で失う犠牲の大きさと、
手術で得る延命効果が見合っている
3.根治性、安全性、機能保存で、
バランスのよい適正な手術計画が用意されている
4.1~3の条件について担当医が詳細に説明し、
患者が手術に納得して同意する

僕の敬愛する外科医の故・土屋繁裕医師の名著は、
ズバリ、タイトルが、
このガン、切るべきか、切らざるべきか」(NHK出版)。
さらに、この著書では、普通の外科医がなかなか喋りたがらない、
手術治療のマイナス面についても分かりやすく、
土屋医師が明かしています。

ガンの患者なら知っておくべき「手術の長所・短所」について
解説した部分をここでは紹介しておきましょう。
(詳しく知りたい人は本書を紐解いて下さい)

1.≪手術の延命効果はどれくらいか?≫

「実際は、どんなに上手に取ったつもりでも(略)
見えないミクロのガンは、取り残しているわけです。
だから、手術を受けた患者さんは全員が治らないのです。(略)
時間が経てば検査で分かるマクロのガンに変身し、再発してしまいます。(略)

仮に手術前のガン量が25グラムで、
手術で24グラム取って1グラム残したとします。
このガンの細胞分裂期間を100日とすれば、
取り残したガン量が元の25グラムになるには、(2、4、8、16、32で)
おおよそ4回から5回の細胞分裂を要します。
つまり手術で得られる延命効果は、
400日から500日という計算になり1年から2年弱となります。」

2.≪治療のEBM(科学的根拠治療)よりHBM(人間的質的治療)≫

「科学的根拠に基づいた医療――EBM(Evidence Based Medicine)が
重要視されるようになってきました。(略)
例えばガンの手術でリンパ節郭清をするのは
当たり前だと信じられていました。
ところが(略)これも科学的根拠がなかったのです。(略)万能ではないのです。

ガン治療の有効性を評価するEBMでは(略)
生活の質(QOL=quality of life.質の治療)を比較した
科学的根拠はほとんど得られません。
しかしどんなに科学的根拠が得られても、
絶対その治療でなければいけないとは限りません。
なぜなら治療を受ける患者さんは人間であり、
哲学や感情が存在するからです。」

どうでしょうか?  じつに分かりやすく具体的に、
ガン手術や治療の実態を説明してくれていると思いませんか

納得して延命力を掴むには、「治療のマイナス面も教えてくれる医師」
いや「患者の寂しさを分かってくれる医師」を探す――、
これがとっても大事なガン患者の法則なのですね。

長寿時代とは、社会福祉制度をどう維持していくか?
という国の財政の問題だけでなく、
個人そのものの生き方に大きな問題を投げかけています。

いまや、ガンは特定な人の病気、いや、他人事ではなくなってきたわけです。
これが、日本は長寿難病国、いや長寿病弱国とまでいわれ、
「2人に1人がガンになる」と恐れら始めた所以でしょう。
これからは、もっとひどい状況になりかねないようです。

「気がつけば、あなたもガン」いや
「気がつけば、あなたも“多重ガン”」といわれる
長寿難病時代の始まりとなりかねないからです。
前立腺ガンの次に胃ガン,さらに肺ガン・・・といった、
全く別の部位に新たにガンが出来てしまう
「多重ガン」の患者さんが増えてきているからなのです。

一病息災ならぬ、多病息災の長寿社会の中で、
いかに「寝たきり長生き」ではなく「元気で長生き」していくか?
人間らしく生きていくか?
人生を設計していくか?
ここがポイントの時代となりました。